第2章 緑の惑星シュライクライド
ウルトラ級ファイアーウォールの艦長ピロックは絶対捕縛できることを確信していた。
「ティラ・スカルトまであと標準時間で3分か、どうやら追いつけそうだな。」
側近が答える。
「はい艦長奴らはハイスペースから飛び出た瞬間は無防備でしょう!一気に墜落させて見せましょう!」
そのとき一人の兵士が報告をしにきた。
「艦長、奴らのハイスペース座標が出ました。」
「報告の必要は無い。どちらにせよもうすぐ奴らは宇宙の塵と消えるのだからな」
艦長がそういうのがはやいか突如ファイアーウォールはハイスペースを脱出した。
だが艦長が見たものは予想と全く違うものだった。
この船の周りには大量の共和国の軍隊がいたのである。
ピロック艦長はわけも分からぬまま立ちすくした。
「Eー7!やったぜ!帝国の奴らをまいてやった!」
クライドは歓声を上げた。
Eー7も電子音を響かせる。
彼らはまだシュライクライドの近くで留まっている。
そのとき扉が開きバスルが入ってきた。
「おう、バスル!帝国の奴らはうまくまいてやったぜ!」
「ああ、さすがは帝国軍1の操縦士だ!」
「元帝国軍の操縦士だ。それにおれは1番なんてもんじゃなかったさ」
そうだ、俺はあいつに・・・
「がははは!そんなことはどうでもいいンだ!問題なンはこっから帰ることだからな!」
「こっからは俺の専門じゃないんでね。俺は何もしないぜ?」
「それは俺たちに任せな。」
そういうなりバスルは出ていった。
「E−7!俺たちの作戦、成功したみたいだぜ!」
E−7もうれしそうに電子音を響かせた。
彼らの作戦とは敵にティラ・スカルトに行くと見せかけ、シュライクライドの近くにジャンプして相手を欺くというものだった。
さらに共和国防衛部隊に連絡を入れておいたためおそらく今頃あの戦艦は拿捕されたか宇宙の塵と消えただろう。
クライドが本気でうれしいと思えたのは帝国から出てから初めてだった。
「Eー7!こっからは俺たちの専門じゃねぇんだ!さっさと部屋にもどるぞ」
「艦長!早く指示を!」
ピロック艦長はこの声によって放心状態から目覚めた。
もはや共和国の戦艦が自分たちを取り囲んでいる。
「もはや我らに道は残されていない。投降しよう。投降すれば命まではとられないだろう」
ピロックがそういい共和国軍にそれを伝え全軍に武装解除を命じようとしたそのときだった。
ブリッジに背の高いがっしりした男が入ってきた。
「艦長殿、まさかこの状況で投降しようと考えているのではござらんな?」
ピロック艦長はこの男の声を聞くなり真っ青になって固まってしまった。
「艦長殿、いったいどうなされたのか?あなたは石像にでもなられたか?」
「貴様!なぜここにきた?皇帝陛下の伝令を伝える以外に貴様はここに何も用はないはずじゃなかったのか?」
ピロックは震えながらも威厳を持った言い方で言い放った。
「艦長殿、私は皇帝陛下のお言葉を伝えにきた。陛下は貴様らの活躍を期待しているそうだ。艦長殿なら死んでもやってくれるだろうといっていらっしゃった。私が伝えにきたのはそれだけだ」
そういうとその男は突然顔が歪み、煙が出てきて縮んで最後には消えてしまった。
ピロックはこの異常な種族のいた場所を見て固まってしまった。
「艦長!早くご支持を!」
乗組員がそういったときピロックは放心状態から目覚めマイクに向かって全軍に支持を与えた。
「・・・・・全軍突撃だ・・・・・・・」
共和国軍ロード・バンド総司令官はピロック艦長が投降するときの準備を進めていた。
ちょうどそのときだった。突如戦艦が大きく揺れた。
「総司令官!大変です。帝国軍が首都惑星に向かって攻撃し始めました。早くご指示を!」
「なんだと!?攻撃を始めた?帝国に欺かれたか。全軍に直ちに臨戦態勢に移り帝国の戦艦を破壊しろと伝えるんだ。奴らが惑星に近づく前に破壊しろ!」
共和国戦艦の中は帝国の最強を誇る戦艦であるウルトラ級ファイアーウォール相手に戦いを始めた・・・。
「クリッド!そんなところで何をしている?さっさとくるんだ!」
クリッドを呼ぶ大人の声だ。
彼はクリッドが一番失望している大人、族長のクリャンである。
「いったい何があったって言うのさ!僕は何もしてなかったよ。また僕のせいだとか言って責任押し付けるつもりじゃないだろうね」
クリッドは皮肉ぶって言った。
「いつわしがおまえに責任を押し付けた?いつもトラブルを起こすのはおまえだ」
「ちがうんだよ!僕がトラブルを起こすんじゃないんだ。トラブルの方が僕に近づいて来るんだ」
クリャンは無視してクリッドを引っ張って今の住処に連れて行く。
「族長!何でもう住処に戻らなくちゃいけないんだよ!まだ帰るには早いよ!」
クリッドは喚きたてた。
クリャンはめんどうくさそうに答えた。
「侵略者がこの星に降り立った。まだ決まったわけではないのだが危険だということだ。分かったらさっさと歩け!」
侵略者、クリャンのような大人はよそ者が来るのをひどく嫌う。
特に侵略者には部族の者を近づけようともしないほどだ。
大昔にこの星にも侵略者が来たことがあったのだがそのときもシュライディアンと侵略者との間に戦争が起こり共和国が調停に乗り出すほどの大規模なものになったのだ。
それからこの星によそ者が来たのは1度しかない。今では伝説になった人間の女性だ。
あの女性がここに何をしにきたのかは分からない。
だがこんなところに人が来るはずがない。
明らかに彼女は侵略者だった。
だがそのころの族長にとってそれはどうでもいいことだったのだ。
シュライディアンの教えの信仰の厚かった当時の族長は彼女に与えられるものは与えた。
それを反対するものもたくさんいた。
そういう人たちの子孫はいまも人との混血を嫌っている。
だがそういうものたちの中で争いが起こることもいままでなかった。
それは人間の女性と結婚した族長の子孫が族長を務めていたからだった。
だがいまは混血嫌いの族長クリャンになってしまい、混血は居場所をなくしつつあった。
クリッドは歩きながら天を仰いでため息をついた。
僕もいつかいけるのだろうか?あの宇宙のかなたへ・・・
「E−7、ハルビラはいないか?」
ドロイドは工学センサーで調べたが誰もそばにはいなかった。
「よし、じゃあ外へ出よう。」
クライドはそういうと輸送船の窓からE−7をもって飛び降りた。
E−7はかなりの重量で着地は不可能と判断した。
そこでジェット噴射でクライドと自分のシャーシを持ち上げた。
「おっとあぶねぇ!ちゃんと上手く着地しろよ」
クライドが行った瞬間E−7はジェット噴射が切れ地面に落下した。
クライドもE−7と一緒に落下したがどうにかE−7の下敷きにだけはならずにすんだ。
まったくあぶねぇな!とクライドは悪態をついて先を急いだ。
「どうもこれは変な感じだな。」
クライドは人間にはこの星を耐えれないので鼻に空気中の気体を酸素に変換する機械をつけていた。
もちろんハルビラの船から持ってきたものだ。
愛用のブラスターを手に持ちクライドは注意深くシュライクライドの森の奥へ入っていく。
「確か上から見たときはこの辺だったんだけどな。」
そうつぶやいた直後クライドはさっきまで自分のいた場所を見上げていた。
「なんてこった。密輸業者が落とし穴に落ちるとはな。」
地上からE−7を捕まえたシュライディアンが穴に落ちたー侵略者―をまじまじと眺めていた。